/ 11月 5, 2019

鹿肉というと「臭い」という印象を持つ方も多いのではないでしょうか?

しかし、当店では鹿すね肉を煮込んだカレーが看板メニュー。

鹿すね肉カレー
県内外からこの鹿すね肉カレー(850円)を食べに来て頂いておりますが、
このカレーを食べた方から「臭い」といった感想は一度も聞いたことがありません。

私自身も「けもの臭」や「血生臭さ」が気になったことがほとんどないため、臭み消しの処理は一切したことがありません。

臭みがないから余計な工程が発生せず、よりシンプルな調理で鹿本来の純粋な肉の味を損なわずに提供できると考えています。

当店は獣肉解体処理施設「わかさ29工房」で処理された鹿肉のみを使用しています。
野生の鹿肉がどのような理由で「安全で臭くない肉」として私達の手元に届くのかを多くの方に知ってほしい。

今回、そんな思いからわかさ29工房を取材してきました。

若桜の鹿肉の特徴、おいしさの理由は?

若桜町の鹿がおいしい理由は?

若桜町(わかさちょう)の鹿肉※1は全国的にも高い評価を得ています。
※1若桜町にあるわかさ29工房で処理された鹿肉のこと。狩猟地域は若桜町~八頭町になります

首都圏の一流店の他、県外内外の多数のレストランで活用される若桜町の鹿肉。
でもなぜ若桜町の鹿肉がこれほど人気なのかは地元ではあまり知られていません。

わかさ29工房の鹿肉が使われているレストラン
出典:GIBIETRO “フレンチのカリスマが贈るジビエとの一期一会 「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」”

東京・神楽坂の本多横丁にある老舗フレンチ「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」
こちらのレストランでもわかさ29工房の鹿肉を使った料理が提供されている

 

今回お話をうかがったのは、わかさ29工房の施設管理責任者である河戸建樹(かわと たてき)さん。

わかさ29工房

河戸さんは若桜の鹿肉が美味しいと言われる理由について以下のように教えてくれました。

猟師さんの放血の処理が上手い

鹿肉が臭くなるかならないかの大きな要因の一つに放血があります。
放血とはいわゆる「血抜き」のこと。

鹿の血抜きは仕留めた後、すぐにその場で行われます。
時間が経つと肉に血が周り、臭い肉になってしまうためです。

この処理が若桜町~八頭町の猟師さんはベテランで熟知されている方が多く、搬入時の肉の状態が良いのが若桜の鹿肉が美味しい理由の一つだそう。

搬入された肉は枝肉のまますぐに冷やす

鹿肉に臭みを残さないもう一つの要因はスピーディーに冷やすということ。

わかさ29工房では、搬入から50分ほどで枝肉(頭・内臓・尾・肢をとり去った肉)にして専用冷蔵庫で冷やします。

スピーディーに冷やすことで、ジビエ特有の獣臭をはじめ、血生臭くなることも予防できるのだそうです。

今ある環境が美味しい鹿肉を育てる

標高1,510mの氷ノ山をはじめ、高低差のある環境で育つ鹿は肉がきめ細かくなり、しなやか。

山に湧く清水を飲み、どんぐりをはじめとした木の実で育つ鹿の肉はクセがなくて味に深みが出るのだそう。

なぜ鳥取県の鹿肉出荷量は多いの?

品質、安全性についての取り組みに力を入れているのは上記の通りですが、さらに「猟師さんとの繋がり」も大切にしていると河戸さんは話します。

若桜町~八頭町で捕獲された鹿は、約70%がわかさ29工房に搬入されます。
全国平均が約10%前後であることから、いかに搬入率が高いのかが分かります。

2019年現在、鳥取県におけるジビエ肉の出荷量は北海道についで全国第2位。
そして鳥取県の中でも若桜町からの出荷数が大半を占めています。

若桜町に特別鹿が多いというわけではなく、こうした猟師さんと獣肉解体処理施設の連携が十分に取れていることが出荷量の多さに繋がっていると言えます。

いのちを無駄にしない取り組み

鹿の命を無駄にしない取り組み

野生の鹿を狩猟する目的は食肉のためだけではありません。
近年、若桜町のような里山を中心に鹿や猪による農作物の食害が深刻化。
その被害総額(全国)は年間約200億円にも及ぶと言われています。

参照 平成30年度農作物鳥獣被害防止対策研修資料 (pdf)

温暖化による生息分布地域の拡大や、過去の保護政策などが影響していると考えられ、鹿においてはこの25年間で推定個体数が約10倍に増加(約456万頭)。
こうした背景により駆除される鹿は全国で約59万頭、わかさ29工房でも2,318頭の鹿を解体処理しています(平成30年)。

「品質の高い鹿肉」として処理し、多くの方においしく食べてもらうことは駆除される鹿の命を無駄にしないことに繋がるのだと教えて頂きました。

美味しいだけじゃなく安全性も確保。HACCPガイドラインを遵守

わかさ29工房
わかさ29工房施設内

鹿は管理された環境で育てられた家畜ではなく、天然環境で育つ野生動物。

そのため、安全性に不安を感じる声は少なくありません。
実際、加熱不足の鹿肉の場合、E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌または寄生虫による食中毒のリスクがあります。

参照 厚生労働省「ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう」

わかさ29工房では搬入から出荷までのすべての工程についてHACCPガイドラインを遵守。
鳥取県では初のHACCP適合施設認定
を取得しています。

【HACCPとは】
HACCPは 食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因を分析しそれを最も効率よく管理できる部分を連続的に管理して安全を確保する管理手法である。

引用:Wikipedia

国産ジビエ認証施設に認定

2019年7月3日、わかさ29工房は全国で7施設目となる国産ジビエ認証施設に認定されました。

【国産ジビエ認証施設とは】
消費者のジビエに対する安心感を高め、普及拡大を推進するために農林水産省が定めている制度であり、狩猟で得た自然の野生鳥獣の食肉に関する衛生管理基準や肉の切り分け方を定めた「カットチャート」の順守、適切なラベル表示によるトレーサビリティ(生産流通履歴)の実施などを条件に認定する制度。

こうしたトレーサビリティーの徹底した整備は、全国的にも高く評価されており、他県からの研修依頼が後を絶たないほど。

今後ますます安心安全な「とっとりジビエ」としてブランド認知の後押しとなりそうです。

まとめ

今回、わかさ29工房における取組みをくわしく教えてもらいました。
この取材を通じ、私自身も仕入れしている鹿肉の品質の高さ、安全性を改めて再確認できました。(河戸さん、お忙しい中ありがとうございました!)

全国的に人気の高まる鹿肉ですが、実は鳥取県内の消費量は4トンほど。
鳥取県からの出荷量は約48トンなので、県内消費量はわずか1/12程になります。

せっかく美味しくて栄養価の高い鹿肉※2がすぐ身近にあるのに口にしないのはもったいない―。
ぜひ地元でこそ、この鹿肉を味わってほしいし、健康に役立ててほしい。

そんな思いでこれからも美味しい鹿すね肉カレーをご提供していきたいと思います。

※2鹿肉の栄養価

高たんぱく・低脂肪・低カロリー・低コレステロール。
鉄分をはじめビタミンB群、ナイアシンなどのビタミン・ミネラルも豊富。

最近ではシカ肉に多く含まれる「アセチルカルニチン」というアミノ酸の一種が脳機能向上やストレス軽減、疲労回復の効果があると報告され注目を集めています。

ダイエットやアスリートの食材としても活用されています。

 

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